1/6「国民の宝」 1/13「WHOの医療評価」 1/20「世界一の医療費抑制策」 1/27「市場原理化の医療」 2/3「患者負担増える『混合診療』」
2/10「新世紀の医師憲章」 2/17「高齢社会危機と消費税」 2/24「社会保障と公共事業」 3/2「薬漬け医療の真実」 3/9「国保があぶない」
3/16「誰のための介護保険」 3/23「医師の名義貸し」


「医療報道」   上塚高弘(熊本県保険医協会会長)


 ある全国紙が7年前、1面トップで「医療保険2千億円過剰払い−レセプト審査で判明、水増し請求などで」という記事を載せました。これを見た読者は、医師が正当な報酬に上乗せ請求した分が2千億円もあり、それが審査でばれたのだと思うでしょう。
 事実は、医師が請求した分から保険者が2千億円支払いを削減したということです。削減の理由で多いのは保険の間違いです。失業で社保から国保に変わったのに社保の保険証を持って来る患者さんがいます。
 病名漏れもあります。高血圧の患者さんの腰痛に湿布を出した際、「腰痛症」などの病名をつけ忘れると、「高血圧に湿布は不正請求」とされます。医学的に正しいのに保険で認められないことや、医学的にも保険上も正しいのに保険者が認識不足のこともあります。中には医師の間違いもありますが、水増し請求をレセプト審査で指摘されることは、まずありません。

 つまり医師はちゃんと診療しているのに、保険者の見解で2千億円(請求医療費の0.7%)が支払われなかったということ。医師は被害者ともいえます。
 しかし、前記にような記事だと読者は医師に同情するどころか、悪者視するでしょう。国民医療費の増加を不正請求のせいだと思う人がいるかもしれません。
 この記事の翌日、医療費の患者負担増が実施されました。国は国民の意識を医師批判へ向けさせ、たくみに患者負担増への批判をかわしたのです。新聞が、国の記者クラブでの発表をそのまま流すと、こういう報道になることがあります。

 もちろん真実を追求した医療記事もあります。ただ一般読者はなにが真実かの判断に迷うでしょう。1月からの私の小論が医療報道を読む際の判断に少しでもお役に立てば幸いです。
H16年3月30日
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