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「高齢社会危機と消費税」   上塚高弘(熊本県保険医協会会長)


 日本の急速な高齢化に、政府は高齢社会危機論を唱え、お年寄りが肩身を狭くしている傾向があります。
 15歳から64歳までをおみこしの担ぎ手にし、65歳以上のお年寄りを何人で担げるかという図がよく出されます。1970(昭和45)年には10人で1人のお年寄りを担いでいたのが、1995年には5人で、2004年は3.5人で、2025年には2人で担がなければならなくなるから大変だというわけです。
 このおみこし理論は64歳までは全員働き、65歳以上のお年よりは全く働かないという仮定に立っていますが、学生や専業主婦もいますし、65歳以上でも男性の36%、女性の15%が働いていますから、この理論が成り立たないことは明白です。
 社会が危険かどうかは、実際働いている人が自分を含めて何人を支えられるかを見ればいい訳ですが、これは、50年前も現在も2020年も、ほぼ2人つまり自分のほかにもう一人養えばいいということが分かっており、高齢社会は危機ではありません。
 それでも、政府が高齢社会危機論を持ち出したのは消費税を導入したかったからでしょう。1989年、高齢社会に備えるという名目で3%の消費税が導入されました。翌年、高齢者社会福祉推進10カ年計画ができ、消費税は目的税ではありませんが、当然、同計画主体に使われるものだと思われました。しかし、消費税導入6年間の金額22兆円のうち、同計画に使われたのはたった9千7百億円(4.3%)だったのです。結局、現在まで納められた消費税は136兆円で、その間減税された法人税は131兆円です。誰のための消費税だったのでしょう。
H16年2月17日
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