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2/10「新世紀の医師憲章」 2/17「高齢社会危機と消費税」 2/24「社会保障と公共事業」 3/2「薬漬け医療の真実」
3/16「誰のための介護保険」 3/23「医師の名義貸し」 3/30「医療報道」


「国保があぶない」   上塚高弘(熊本県保険医協会会長)


国民健康保険(国保)は4600万人が加入するわが国最大の健康保険組織ですが、その国保が危機に陥っています。

 国保の保険料は自治体によって違いますが、国は所得や資産によって決まる応能割と世帯の構成人数で決まる応益割を半々にするよう指導しています。
 熊本市を例にとると、保険料に資産割はなく、年所得から33万円を控除したものの9.4%である所得割と、一世帯25100円の平等割と、家族1人当たり31750円の均等割からなり、上限は年額53万円です。
 介護保険料も同様の計算方法で、国保と一緒に徴収され、上限は8万円です。

 仮に夫婦と子供2人の世帯でみると、年収463万円で医療と介護を併せた保険料は上限の61万円になります。年収2千万円でも61万円(保険料率3.1%)、1千万円でも61万円(保険料率6.1%)ですが、4百万円になると57万円(保険料率14.3%)、2百万円では36万円(保険料率18%)と、低所得者ほど保険料率が高い逆累進になるのです。

 それで、低所得者には保険料を払えない人が大勢おり、滞納者は全国で412万人(18%)に達しています。このうち26万人は保険証がもらえず、「国保の資格はあります」という資格証明書が渡されています。
 資格証明書で病院を受診すると、医療費はいったん全額負担しなければならず、受診をためらって手遅れになったケースもあります。日本医療を支えてきた国民皆保険が事実上、崩壊しているのです。

 国保の保険料は応益割を廃止し、所得割も社会保険程度の定率として、高額所得者にも同率で負担してもらうよう、上限は撤廃すべきではないでしょうか。
H16年3月9日
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