1/6「国民の宝」 1/20「世界一の医療費抑制策」 1/27「市場原理化の医療」 2/3「患者負担増える『混合診療』」
2/10「新世紀の医師憲章」 2/17「高齢社会危機と消費税」 2/24「社会保障と公共事業」 3/2「薬漬け医療の真実」 3/9「国保があぶない」
3/16「誰のための介護保険」 3/23「医師の名義貸し」 3/30「医療報道」


「WHOの医療評価」 上塚高弘(熊本県保険医協会会長)

 前回は患者さんにとっての医療を「国民の宝」と書きました。外国で医療を受けた経験がある方は分かっていただけたと思いますが、そうでない方はあまり釈然としなかったかもしれません。しかし、あのWHO(世界保健機関)も日本の医療を世界最高と評価しているのです。
 WHOは2000(平成12)年に世界190カ国の医療実態を調査しました。調査は次の5項目です。@健康寿命 A健康寿命の地域格差 B患者の自主決定権や治療への満足度など C地域や人権などによる患者対応の差別の程度 D医療費負担の公平さ。
 健康寿命というのは、寝たきりになる前の元気なお年よりの寿命です。北欧では寝たきりにならないよう手を尽くしていますから、北欧の方が健康寿命は長そうですが、日本が平均寿命と共に健康寿命も世界一なのです。そのほかの項目でも日本はすべてベストテンに入り、総合成績である「健康達成度総合評価」でみごと第1位になりました。
 ちなみに2位以下は、スイス、 ノルウェー、 スウェーデン、 ルクセンブルグの順。今政府が盛んに真似しようとしているアメリカは15位です。

 もちろん、この結果をもって日本の医療に問題がないなどとはいえません。「患者の自主決定権や治療への満足度など」は10位でした。私たち医師をはじめ医療担当者が診療のレベル向上を図るとともに、狭い病室や、長い待ち時間、説明不足などが解消されるような政府の政策も必要です。
 特に、日本の医療向上に役立ってきた国民皆保険制度はぜひ守っていかなければなりません。近年患者負担が増え、国保など保険制度の崩壊が見られます。社会保障の充実なくして世界一の維持は困難です。
H16年1月13日
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