1/6「国民の宝」 1/13「WHOの医療評価」 1/20「世界一の医療費抑制策」 1/27「市場原理化の医療」 2/3「患者負担増える『混合診療』」
2/10「新世紀の医師憲章」 2/17「高齢社会危機と消費税」 2/24「社会保障と公共事業」 3/2「薬漬け医療の真実」 3/9「国保があぶない」
3/23「医師の名義貸し」 3/30「医療報道」


「誰のための介護保険」   上塚高弘(熊本県保険医協会会長)


 介護保険は「社会でお年寄りを介護する」と導入されましたが、実際は増大する高齢者医療費の国庫負担分を国民に肩代わりさせるためだったようです。

 民医連が介護保険制度の導入前から介護を受けていた4,500人を対象に、介護の費用、サービスと家族の負担が制度導入前後でどう変わったかを調査したところ、費用は増加81%、不変14%、減少5%でした。新たに介護保険料が増えたわけですから、ほとんどの人は費用が増えますが、裕福な人は特別養護老人ホームの入所費用などが安くなり、負担が減っています。
 介護サービスは増加35%、不変52%、減少13%で、3分の2の人はサービスがよくなっていません。家族負担は増加24%、不変55%、減少11%で、負担は減った人より増えた人のほうが多く、「社会で介護する」ことは失敗に終わったことを示しています。

 保険料は自治体で異なりますが、65歳以上では月15,000円の年金生活者からも自動的に千数百円が引き落とされるなど、低所得者は生活が圧迫されて介護保険を利用するどころではないのが実情です。
 もし利用するようになっても、利用料(1割)負担が大きく、ほとんどが利用できるサービスの4割ほどしか利用していません。

 40歳から64歳までは、医療保険料と一緒に介護保険料が徴収されますが、介護保険対象の疾患は決まっていて、99.7%の人は保険料を納めるだけ。これは無駄と介護保険料を納めないと、医療も受けられない仕組みになっています。介護保険は国民の負担増で国の社会保障費を減らすことに成功しました。
 しかし、国民が望んでいることは、貧富に関係なく必要な人が必要な介護を受けられることではないでしょうか。
H16年3月16日
まえへ つぎへ