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「医師の名義貸し」   上塚高弘(熊本県保険医協会会長)


 医師の名義貸し問題が表面化しました。勤務していないのに給料をもらう医師も、その医師がいることにして診療報酬を請求する病院も確かに問題ですが、これを違法だとして、単にやめさせれば済むというような問題ではないようです。
 大学病院には研修中の医師が大勢います。これらの医師には研修費が支払われているのですが、国は人数分の支給をしてくれませんので、1人分を数人で分けることになり、10万円に満たないことも珍しくありません。そこでアルバイトとして民間病院で当直をしたり、それもできないほど忙しい場合は名義を貸したりしていたわけです。
 また医局の研究費も国の予算はすずめの涙ほどですから、地方の病院から医師派遣の謝礼が入れば役に立っていました。

 病院では急性疾患の病棟の病床16床につき1人、慢性疾患では48床につき1人の医師が基準で、その80%以上の医師がいないと診療報酬が減らされ、経営困難になります。どうしても医師が確保できなければ入院患者さんを退院させなければなりません。すると在宅医療になりますが、それを支える体制はできていませんから、患者さんも家族も悲惨なことになります。そうならないように名義を借りていたのです。
 研修医や研修病院には十分な手当てがなされるべきですし、医師が行きたがらない地方の病院への医師派遣では、行政と大学が協議して、地方にいても医師が勉強できるような制度を作るべきでしょう。
 病院に対しては病床を減らしてもいいように、国が特別養護老人ホームなどの収容施設をたくさん造る必要があります。
 いずれにしても患者さんにしわ寄せがいかないように、早急に根本的な対策をとることが望まれます。
H16年3月23日
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