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「患者負担増える『混合診療』」  上塚高弘(熊本県保険医協会会長)


 先週に続き、元米ハーバード大医学部助教授・李啓充先生のお話をもう少し。
 先生の弟さんが日本でクモ膜下出血になられました。この病気はたいてい脳動脈りゅうの破裂によって起こり、手術で出血を止めますが、術後30%ほどの人に血管攣縮による後遺症が起こります。
 欧米ではその予防にニモジピンという薬を使うのが一般的ですが、日本では認められていません。こういう時、ニモジピンは自費で払いますから使って下さいという方がおられます。
 これはニモジピンは自費でそれ以外の治療は保険ですから、混合診療といい、現在日本では禁止されています。先生の弟さんにもニモジピンは使うことができず、不幸にして後遺症が残ってしまいました。
 私はお話を聞いていて、先生は「だから混合診療が必要だ」と結論付けられるのだろうと思いました。日本の医師の中には、まだ認められていない抗がん剤などを自由に使えるように、混合診療を希望している人が大勢います。

 しかし、先生は「でも混合診療は取り入れてはなりません」と言われました。「混合診療ではニモジピンのような高い薬(1錠約1万円)を買える人と買えない人が出てきますが、お金で治療に差が出てきてはいけません。よい薬は早く保険に取り入れるのが筋です」とのこと。弟さんの病気で歯がゆい思いをしながら、それでも本来の医療のあり方を追求される姿勢に感動しました。
 医療に株式会社を導入しようとしている総合規制改革会議では、混合診療の解禁も狙っています。日本の診療報酬は安く、株式会社も保険では儲かりません。それで保険外で利益を上げようとしているのですが、それは患者負担が増えることになるのです。
H16年2月3日
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