「財政より国民の健康に配慮を」会長談話


 10月19日、厚生労働省より「医療制度構造改革試案」が発表された。
 これは「骨太の方針2005」に対応しつつ、いかにして保険財政を守るかという視点からの改革案であり、いかにして国民の健康を守るかという案ではない。しかし、厚生労働省のそもそもの役割は、国民の命と健康を守る事であり、そのための改革案を検討すべきではないのか。財務省の厚労省支部になってはならない。
 さて、厚労省試算では2025年の国民医療費は56兆円になるので削減が必要ということだが、1997年の予測では2025年は141兆円となっていた。わずか8年でこれほど狂う予測に基づいて、7兆円削減を図るという政策は余り意味が無いと思われる。実際ここ数年の国民医療費は30兆円から余り上がっていない。
 それより、医療の質を保つには何が必要かを検討すべきである。
 「医療制度構造改革試案」に先立ち、日医は厚生労働省に診療報酬の3%以上の引き上げを要望している。これは、医療界では医療安全を図る見地から前回の診療報酬から2年間で医療従事者を3%増やしているが、その人件費として1.5%、医療の進歩を取り入れるために1.2%、小児救急や産科医療対策および医療用廃棄物対策に0.5%、合計3.2%というものである。医療機関の所得増は考慮されていない。25年間診療報酬を抑制され続けた挙句の要求としては最低限度のものといってよい。
 厚生労働省としては、せめてこの程度の要求は受け入れるべきであろう。さもないと、サッチャー後のイギリスの二の舞いを踏む事になる。



H17年10月21日 熊本県保険医協会
会長 上塚 高弘