クラシック音楽沼にはまりました
2020年12月、高橋芳朗著『ディス・イズ・アメリカ「トランプ時代」のポップミュージック』に出てくる楽曲を全部視聴したくてSpotifyを初めて利用した。あれから4年以上過ぎ、再びトランプ氏が米国大統領に就任し、米国のポップミュージック界も様変わりした。
私もポップミュージックからクラシック音楽を聴くようになり、音楽アプリはSpotifyよりもクラシック音楽に強いApple Musicに変わった。クラシック音楽を楽しむようになるなんて思いもしなかった。
過去の私がクラシック音楽を聴けなかったのは「同じ曲を聴くのに何枚もレコードやCDを買うなんて無理」だったからだ。クラシック音楽は贅沢だと思い込んでいた。今は音楽アプリを使えば、録音技術が安定した20世紀半ば以降の多くの演奏を手軽に聴き比べることができる。すると演奏者や指揮者、録音した時代が異なるとまったく別の印象を持つ。私には音感はないし、スマホで聴くし、聴力も加齢とともに低下傾向だが、それでも違いに気づけるほど演奏は異なり自分の好き嫌いが分かる。なので「この曲を退屈に感じるのは、私だけの問題じゃなくて演奏者も問題があるのかもしれない(上から目線ですみません)」と開き直ることができた。またYouTubeには多くのクラシック演奏や解説の動画が流れており、オーケストラ曲の聴き比べや楽譜の動画、ピアノ演奏者の手指の動きが音楽とともに配信されるなど動画での楽しみ方があふれている。
NHKは地上波、BS、ラジオでもクラシック音楽の番組が豊富にある。NHKの番組だと曲解説や演奏者の思いなど貴重な情報も踏まえて演奏を楽しむことができ、楽曲が生まれた時代の文学や絵画、歴史にも興味は広がる。さらに驚くのがオペラだ。これは好みが分かれるところだが、名作オペラは再解釈、新演出が盛んに行われている。音楽と歌詞は変わらないが舞台設定(時代、社会背景、登場人物の年齢や職業など)を翻案し、舞台美術や衣装も大きく変化させ、18~20世紀の物語でも現代人が共感できるような「New Production」として、世界中の劇場や音楽祭で上演されている。実際にオペラを劇場へ観に行く機会は残念ながら滅多にないが、日本が誇る新国立劇場はオペラ作品をオンライン配信している。
松竹系映画館(熊本では熊本ピカデリー)はニューヨーク・メトロポリタン歌劇場(MET)オペラをニューヨーク公演から数週遅れで上映している。童謡、歌謡曲、演歌、音頭、ロック、ポップスで育った私なので、クラシック音楽を聴いていて気分がよくなると横ノリや縦ノリ、2拍子や裏拍など私なりに全身で楽しんでいる。皆さんもクラシック音楽を久しぶりに聴いてみませんか?
にしくまもと病院
今村 理恵(2025年3月『熊本保険医新聞』掲載)