白川流域体験学習
11月号の原稿依頼が来た。今は未だ8月である。この夏は、川をはじめとした水の事故がかなり多かった気がする。熊本でも白川で高校生がおぼれるという事故があったのは、皆様の記憶にも新しいのではないだろうか。
この夏、我が家は、白川親子流域体験学習という企画に参加した。息子が学校から持ち帰った、午前中に白川の水生生物の観察やパックテストによるCOD(科学的酸素要求量)測定を通じて白川の環境学習、午後からは安全体験学習という日程の書かれた案内チラシを見て、白川で流されるという貴重な体験ができることに心惹かれて応募した。
熊本大学裏の河川敷での環境学習で、川中の石を持ち上げて水生生物を探すのは、童心に戻って楽しかった。そしてその生物がどのような環境指標になるのか、親子で一覧表と見比べ、白川の水環境の良さを知った。また、ビーカー半分ほどの水にジュースを1滴たらしただけでCODが1リットルあたり100㎎/l超となる中、白川の水が水道水とほとんど変わらないCODレベルだったことにとても驚いた。
午後からはお待ちかねの安全体験、安全に関する講義を聞いた後、ウェットスーツ、ライフジャケット、ヘルメットを着用し、熊本大学の裏の白川左岸に向かった。いよいよ川に入り、背浮きで両腕を広げてバランスを取るディフェンシブポジションで浮く。川岸に向かって45度、足が川下に向かうよう体勢をとる。流れに押されて頭が川下に向くと、オールを漕ぐかのように腕で水をかきながら体勢を戻す。川岸近くの流れが緩やかな浅瀬が近くなったら両腕で水をかいて岸に寄る。浅瀬近くで2回ほどの練習を行った後、途中で一度対岸にあがったが、ゴールの子飼橋際まで流された。川の真ん中の流れはそれなりにあったが、想像以上にとても楽しかった。
とは言え今回の経験は、多くのスタッフに守られ、それなりの準備をして流されたからこそ楽しかったことも理解した。そもそも、ライフジャケットが無ければ浮くとは思えない。滑りやすい足元や流れに合わせて回転する状況では、どこで頭を打つか分からない。足元に何が落ちているかも分からない。また、今回はウェットスーツを着ていたが、最近流行りの触って冷たい生地の服は、長時間水の中にいる場合、低体温になりやすいとも聞いた。準備もなく急に流されたらとても対応できない。
白川を大事にしなきゃね、機会があればもう一度参加したいね、と家族で話しながら家路についた貴重な1日だった。
熊本県御船・宇城保健所
小山 宏美(2024年11月『熊本保険医新聞』掲載)