2024年の医療問題

 1か月検診や予防接種を日々やっていく中で、子育てを始めて間もない新米ママたちの不安や心配が、ここ数年でグンと強くなっているな、と感じます。

 多くのママたちの不安は、「あまり知らない」状態で多くの情報に触れてしまうことから起こっています。例えば、テレビでやっていたちょっとした情報をみて不安になる。他の子と比べて自分の子はここが違う、と心配する。 だからこそ、初めてのお産~初めての子育てへの移行期間にどんな情報に触れるかが重要なのです。

 こんなママたちと接するようになって、私は診療の中で「正しい情報」を具体的にママたちに伝えていくことを意識しています。 例えば出産前の母親学級では「お子さんとの触れ合い方」「新生児あるある」「赤ちゃんとママへの家族の関わり方」「スキンケア」「乳幼児突然死症候群」について、産前産後に知っていてほしいことをお話ししますし、1か月検診では「正しいうつぶせの仕方」「感覚刺激を入れること」「発達の促し方」などをお話しします。 私の方から積極的に情報を入れることで、ママたちは「こんなこと聞いてもいいのかな?」を取り払うことができ、安心して自分の不安や疑問を開示してくれるようになりました。

 初めにそのような関係性を作っておくことで、その後の予防接種の際にも「予防接種と関係ないけど1つ聞いてもいいですか?」というセリフがよく聞かれるようになりました。 質問された時には、「これは問題ないですよ。だけど、~な時は受診してね」という風に、〝もう一歩〟を加えるようにしています。 また、「寝返りが遅いから練習するように言われたけど、どんな風にやったらいいかわかりません」と相談してくるママには、「発達の順番はこうだから、まずここを練習しようね」と伝え、普段ママがお子さんにどんな働きかけをしたらいいのか、どう練習したらいいのかを実演して教えています。 〝もう一歩〟を意識した会話のおかげで、ママたちの安心の度合いが変わることを実感しています。

 こんな対応をするようになってから、改めて過去の自分の診療を俯瞰してみたら、事実だけを伝えることに終始してしまっていたことに気づきました。「こう行動したらこうなれるよ」ということを具体的に伝えるだけで、ママの行動が変わり、ママが自分の手でわが子の〝未来を創る〟ことができるんだ、という実感を手渡すことができるのです。 子育ての中で、「私がこうやったおかげでこの子はこうなれたんだ!」とママ自身が成功体験を感じる機会が増えるように。そんな思いでこれからも新米ママたちに向き合っていきたいと思います。

慈恵病院小児科
森 博子(2024年6月『熊本保険医新聞』掲載)