くまもと水防人物語
私は、熊本の地下水を不純物の無いおいしい水という認識でこれまで飲んできました。それが、多くの熊本の井戸から有機フッ素化合物が検出されていることを、最近知りました。なんという事でしょう。いつから?どこから混入?。
そこで私は、1998年、熊本県保険医協会発行の〝くまもと水防人物語〟を開いてみました。当時、原田正純先生方が、2年もの年月をかけて、あらゆる分野の方々の意見を集約し編集なさった本です。今日、熊本は半導体工場進出で、経済経済と沸きに沸いています。ところが、年も前に、当時の保険医協会の先生方は、まるで未来を見透かすかのように熊本の地下水の汚染を危ぶまれ、警鐘を鳴らしていらっしゃいました。
熊本県の北半分の土地は、阿蘇の4回の大噴火による厚い火砕流堆積物で覆われています。熊本平野を囲む山々や台地に降った雨は、この火砕流という土壌フィルターを通しておいしい水となり、地下にはたっぷりと水が蓄えられているのはご存知だと思います。他県には無い特異な構造です。
さて、この本の中に、大人足(おひとがし)という言葉が紹介されています。固まらなかった火砕流堆積物が地下で水の浸食により穴が空き、突然崩壊する窪地のことだと。菊陽、大津、西原などの阿蘇中流域に点在すると。以前、「始末に困るものは、すぐに吸い込まれるけん、ここに捨てよった」「このような所に廃棄物処理場や、化学工場の排水などが廃棄されると深刻な問題を引き起こしかねない」とも書かれていました。
おいしい地下水を育むありがたい熊本の土壌ではありますが、スッカスカの火山灰土壌は有害物質を簡単に通してしまい危険です。私達は、あらゆる生物の生命、健康を守る為に、熊本の土壌の性質をよく知り、よくよく調査した上で、物事を進めて地下水を守っていかねばならないと考えます。質も量も豊かな地下水を未来に残してあげるのは、私達の責務です。
最後に、来たる3月日に熊本健康会議が開かれます。地下水専門の市川勉先生、有機フッ素化合物専門の原田浩二先生をお招きして勉強します。是非ともご参加ください。
入江歯科医院
入江 絹子(2024年2月『熊本保険医新聞』掲載)