朝ごはんに思う事

 皆さんは、毎朝朝食を食べていますか?我が家では、主人は学生の頃から朝食は食べず、娘はぎりぎりに起きて寝ぼけながらパンをかじっている。私はというと、10分程度の朝ヨガをやったあと、心地よい空腹感で納豆や卵かけご飯を食べる。このように三者三様の朝食スタイルだ。

 朝食に求められる条件は、火を使わず手早く準備でき、必要な栄養がとれることだ。朝ご飯に時間はかけられないし、できれば洗い物も出したくない。日本の朝食を象徴する「ご飯+味噌汁+焼き魚」なんていうのは、今や旅館で食べる特別なものである。ホテルの印象は朝食で決まるといっても過言ではないそうだ。ホテルで食べる最後の食事の印象がよいと、そこでの滞在全体の評価が上がるらしい。今では、ホテルも朝食に力を入れており、〝朝食がおいしい宿〟という特集も目にする。夏休みに泊まった有馬温泉のホテルでは、目の前で焼いてくれるオムレツはもちろん、ご当地グルメの作りたての明石焼きや揚げたての串カツなどそれは豪華であった。用意されたおいしい料理をゆっくり食べる時間は格別で、心もおなかも十分に満たされた。

 しかし、日常はというと旅館の朝食とはほど遠い。子供が時々、朝ご飯調査の紙を学校かもらってくる。1品は赤色、2品は黄色、3品以上は青色と、その内容で色分けするのだが、赤や黄色ばかりだったら肩身が狭い思いをしないか、ほかの家庭の朝食が気になる。先日読んだ本に、朝食の歴史について書いてあった。もともと狩猟採集で生活していた時代は、1日の大半を食料集めに費やす。食料が得られて初めて食事ができるため、食事は1日の終わりに1食。朝起きてすぐに食べられるという状況はあり得なかった。新石器時代になって農耕が始まると、余った食料を貯蔵するようになり、そこから初めて朝の活動の前に食べる「朝食」が誕生した。結果的に、シリアル、ジャムやチーズをのせたパン、納豆ご飯は、保存食で構成され、必要な栄養素が簡単にとれる合理的な食事だそうだ。

 そう考えると、我が家の朝食は悪くない。ただ、調査期間中はミニトマトやブドウを添えて、3品以上の朝食として青色に塗り、ちょっとだけ見栄を張るのである。

熊本赤十字病院
豊田 麻理子(2023年11月『熊本保険医新聞』掲載)