子どもたちにはリアルを感じさせてあげたい

 そういえば、この1年以上、熊本県保険医協会の女性医師の会のみなさまと直接にお会いしていないような気がします。
 皆さまお元気ですか。すっかりオンライン会議のモニターごしばかりですけど…。
 自分にとっての1年間は、40代からはあっという間。「さっき年賀状書いたのに、また年賀状を書くの!?」といった感覚です。これは、自転車に乗りなれたら意識しなくなるのと同じで、人生という道を乗っていくことに慣れたからでしょう。だからこの1年半の引きこもり生活も、自分にとっては、なんてことない。
 中学の3年間、高校の3年間を思い出してみると、なんと濃かったことか。中学2年生の中体連のあとに卓球部の部長になって苦労したなぁとか、高校2年生の夏休みに友人の里帰りにくっついての初めての海外旅行は感動だったなぁとか。成人以降の記憶の薄さと比較するとリアルに記憶しています。
 それに比べると、このコロナ禍、現代の中高校生はじっと我慢した生活を長いながーい間、経験させられています。「これは、誰のせい?」と言いたいでしょうね。後になったら、“コロナ世代”と言われるかしら。
 バブル時代を記憶している世代は、60代以上かなと思います。その頃は、ネットはなく、世界の情報も知らないままでしたが、毎日の努力の後にはいいことが待っている気がしていました。でも、「昔がよかった」なんてことは言いません。いつの時代もいいこと悪いことがありますから。
 ちょうどいま、メジャーリーグの大谷翔平選手が特大43号3ランを打ちました。本当にすごいアスリートですね。PCモニターの隅のスペースでネット中継を見ながらこの原稿を打っています。同時に学会シンポジウムのコーディネーター担当をしているので、WEB録画作製で一部をカットしたり、別の録画と入れ替えるなどの切り貼りもしていて、視線は忙しいです。大変便利な時代ですが、なにがリアルかわからない気がします。
 熊本ファミリーメンタルクリニックでは、子どもたちの不安障害での受診が増えています。今を生きている子どもたちには、リアルの楽しい経験をさせてあげたい、早くそんな時代になってほしいと思います。

熊本ファミリーメンタルクリニック 安川 節子(2021年10月『熊本保険医新聞』掲載)