山鹿エールプロジェクト

 いよいよ今年度が終わろうとしている。今年度はとにかく、SARS-Cov-2に振り回された1年であった。三密、新しい生活様式、コロナ禍…。新しい言葉がたくさん出てきただけでなく、緊急事態宣言をはじめ常時のマスク着用など、ささやかな日常が一変した。
 医療の現場にいらっしゃる皆様にとっては、感染管理と日常診療のバランスなど、不安やご苦労の多い1年だったであろうことは容易に想像できる。
 子どもたちにとって、今年度の始まりは、政府による唐突な一斉休校の中でのスタートであった。各種の行事が中止や縮小され、成長過程において経験できることが少なくなったことは、本当に気の毒に思う。
 保健所に身を置く私自身も、クラスター対応や各種の対応・調整等、忙しく大変な1年であった。また保健所職員にとっても、急増した実務のみならず、陽性者や医療従事者、一般住民等、皆様の様々な気持ちに寄り添う電話対応など、苦労の多い1年だったと思う。そのような中、当保健所で行った明るい企画について、ちょっと紹介させていただきたい。
 その名は『山鹿エールプロジェクト』。COVID-19の流行下、「実際に対応いただく医療従事者にエールを送りたい」「コンクール等の中止に伴い、発表の場が無くなった生徒達の晴れの舞台を作りたい」という二つの思いを形にするために、当所の若手職員が企画したものだ。
 コンクールで入賞の多い山鹿中学校の合唱部・吹奏楽部が、歌や演奏を通じ医療従事者にエールを送る動画を作成し、You Tubeに載せるという山鹿エールプロジェクトものであるが、当初は予算もないため、保健所職員がスマホで撮影してYou Tubeにアップしようという程度で始まった。しかし、学校をはじめ各種関係者の皆様のご理解に加え、こちらが思う以上に積極的な協力をいただいた。更には、"くまモン"と"ころう君(鞠智城のイメージキャラクター:ミュージアムキャラクターアワード2020グランプリ)"の応援が加わり、一大プロジェクトになった。おまけだが、山鹿市のPRにおいても、少しは役に立ったのではないかと思う。
 撮影を見守ったが、憂いばかりの日々の中、生徒達の純粋な気持ちが清々しい感動となって心に刺さった。医療従事者の心にも、きっと届いたに違いない。顧問の先生からは、「この機会が無ければ、折角練習して来たのにお蔵入りとなる楽曲もあったので、良い機会をいただけました」との言葉をいただいた。制限の多い学校生活の中、練習成果の披露の場や思い出の一コマとして、この企画を通して保健所が一助となれたかもしれないと思うと嬉しかった。と同時に、忙しい中、このような前向きな事業を企画し、形にしてくれた当所の職員達にも、改めて「ありがとう」という気持ちでいっぱいだ。
 この動画、厚生労働省の『#広がれ ありがとうの輪』プロジェクトにも加えていただいているので、皆さんにも是非『山鹿保健所エールプロジェクト』で検索し、見ていただきたい。

熊本県山鹿保健所 小山宏美(2021年3月『熊本保険医新聞』掲載)