これからの学会の形
今年度は始まって早々、新型コロナウイルス感染防止のため、ことごとく学会や講演会が中止になった。ゴールデンウィークを過ぎたあたりから、少しずつWEBでの講演会や会議が始まり、学会も完全オンラインや現地開催とオンデマンド配信を行うハイブリッド型などに形を変えて開催されるようになった。私のWEB会議デビューは、この保険医協会女性部会の会議である。画面に参加者全員の顔が表示され、会議の間それぞれの表情やしぐさが映し出される。常に見られている気がするので、参集型の会議よりちょっと緊張して参加した。
WEB会議のメリットは、移動時間が省け、時間を効率的に使うことができることだ。普段なかなか参加することができない国際学会にも参加でき、しかもオンデマンド配信では空き時間を有効に利用して多くのプログラムを何度も視聴することができる。また、写真や病理組織などのスライドは、手元のパソコン画面で見たほうがより詳細に観察することができる。腎臓関係の学会では病理組織を見ることが多いので、WEB講演は演者のポインターの位置もわかりやすく、とても見やすかった。
先日、当院の総合内科、後期研修医が中心となって“KUMAMOTO GIM 2020”というセミナーが開催された。当初は満を持して新しい熊本城ホールで開催する予定であったが、コロナ禍でWEB開催となり、残念と思いきや、県外からも参加しやすくなり、他院の忙しい研修医、レジデントも勤務の合間をぬって参加することができた。今回の内容は簡単な病歴と特徴的な身体所見、診察所見の写真を数枚提示し、「さて、診断はなんでしょう?」と考える〝Snap Diagnosis〟であったが、写真が重要になるので、結果的にWEBセミナーに適した企画となったと思う。また、チャット機能を利用すれば、リアルタイムに質問ができ、その場で回答することも可能だ。シャイな人にとっては質問しやすく、受け身になりがちな学習会を、より充実したものにできるのではないだろうか。
今日は、ある学会のシンポジウムの座長を務めた。現地開催とオンラインとのハイブリッドであったが、座長も含め演者もすべて完全リモート参加のシンポジウムとなった。上半身しか映らないとはいえ、マスクがいらないので久しぶりに化粧をし、スーツを着て参加するのは心地よい緊張感であった。ただ、ヘッドセットを準備して張り切って臨んだのだが、操作ミスによる不手際を起こしていまい、今かなり落ち込んでいる(これがオンデマンド配信されると思うとさらに…)。
WEB学会は、学会ロスの今、最も安心して参加できる形だろう。出張先のグルメやショッピングも捨てがたいのだが、今後このような形態は定着していくと思う。何とか早く慣れて、うまく使いこなしていきたい。
熊本赤十字病院 豊田 麻理子(2020年10月『熊本保険医新聞』掲載)