女性の「コレステロール」「中性脂肪」はこうして落とす!
女性医師部会設立20周年記念講演会
女性医師部会の設立20周年を記念し、6月2日、ホテルメルパルク熊本にて性差医療の第一人者である天野恵子先生をお招きし、清田真由美先生の司会で、「女性のコレステロール、中性脂肪はこうして落とす!」と題した講演会を開催した。医師37名歯科医師10名を含む149名の参加があり、配布資料が足りないほどだった。演題がストレートでわかりやすく、関心の高さがうかがえた。
性差を考慮した医療とは、男女比が圧倒的に一方の性に傾いている病態や、発症率は同じでも男女間で臨床的に差をみるものなどに関する研究を進め、その結果を疾病の診断、治療法、予防措置へ反映することを目的とした医療改革である。1999年の日本心臓病学会で天野先生が提唱された。そして『女性における虚血性心疾患』を上梓され、日本における女性外来の開設を牽引された。きっかけにはご自身の経験があったそうである。
微小血管狭心症は、更年期女性の一割がかかる女性特有の狭心症で、いわゆる狭心症とは異なる。胸痛が長く持続し、ニトログリセリンが効かない。不眠、耳鳴り、頭痛などの症状もみられるが、検査で異常所見がみられず、精神的なもの、といわれ、ドクターショッピングとなっていることが多い。
コレステロールはタンパク質や炭水化物とともに生命を維持するために必要な要素であり、体内にはコレステロールをコントロールする機能がある。脂質が異常に高いと、動脈硬化を引き起こしやすく、虚血性心疾患を防ぐためには薬物治療が必要だと言われているが、それは男性を中心とした病態である。女性の脂質異常はエストロゲンと密接な関係があり、閉経後はエストロゲンの低下により脂質は急激に上昇するが、すぐに薬物治療をする必要はない。高血圧、糖尿病、喫煙などの危険因子管理は、閉経前後ともに重要であり、特に糖尿病、喫煙は男性に比し、女性の冠動脈疾患リスク上昇と関連する。禁煙指導は全ての年齢の女性に行うべきである。講演後の質問に対し、受動喫煙も同様のリスク因子だと述べられた。家族性高脂血症、冠動脈疾患リスクがある場合は薬物治療を考慮する。血圧も含め、ガイドラインは男性中心にできており、それを女性に当てはめてはいけない。22市町村の健診結果より、総コレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、ALT、γ-GTP、クレアチニン、空腹時血糖の年齢階級別男女比較のグラフを示されたが、それぞれパターンが異なっており、性差、年齢が数値に影響することがよく理解できた。
現在、原因や治療が確立されず苦しんでいる慢性疲労症候群、筋痛性脳脊髄炎の患者のためにも尽力されている。冒頭、「日本一の女医になりたい、と頑張った」と若き日のご自分を語られたが、今なお精力的に活動されている先生のパワーと優しさに感銘を受けた。
講演会後、これまで女性医師部会にお力添えいただいた方々との交流会をおこなった。板井先生が語られた女性医師部会の歴史は感慨深かった。女性医師部会発足の際、背中を押して下さった宇野名誉会長、天野先生、院内保育園を作られた済生会の副島秀久先生、木村会長から、心に沁みる、そして身の引き締まるエールを頂き、部会委員の秋月、山口両先生を中心に作ったJOYJOYの会の歌を披露して、楽しい会を終了した。
部会委員 池田 景子 記(2018年8月『熊本保険医新聞』掲載)