決 議
 本年4月の診療報酬改定は政権交代後、初めての改定であり大いに期待された。民主党のマニフェストでは、国民医療費を対GDP比で、OECD加盟国平均まで引き上げ、地域医療を守る医療機関を維持し、国の責任で社会保障制度を発展させるとしていた。しかし公称の診療報酬改定率は0.19%の引き上げにとどまったばかりか、後発品のある先発品の薬価の追加引き下げを考慮すれば、0.03%増と実質ゼロ改定に等しい結果であった。
 医療費抑制策からの転換を謳いながら、結局は財務省の財源論と厚労省の政策誘導に終始し、診療所、中小病院には厳しい改定内容となった。
 社会保障分野の充実が、新たな雇用機会を創出するとした論調が徐々に定着しつつあるが、相も変らず医療費をコストで議論する従来の或を脱していない。昨年末に閣議決定された「新成長戦略(基本方針)」の中では、医療・介護・健康関連産業を成長牽引産業と位置づけている。だからこそ、まずは現状の医療崩壊を阻止する手立を講じるべきである。
 わたしたちは、国民のいのちと健康を守る医師・歯科医師として、社会保障の充実こそが国民の財産であることを粘り強く訴えるとともに、本日の定期総会において次の項目の実現を要求する。
一、医療の質と安全を保障するため、公的医療費の総枠を拡大すること。
一、医師・看護師をはじめ医療従事者のマンパワー不足を解消し、医療従事者の労働環境の改善を行うこと。
一、良質な介護サービスの確保と介護職員の待遇改善を実現するために、介護報酬を引き上げ、介護保険制度の改善をはかること。
一、後期高齢者医療制度は廃止し、当面は保険料引き上げによる被保険者の負担増を行わず、移行期までの間は十分な配慮を行うこと。
一、療養病床の廃止・削減計画を見直し、地域の実情に応じた入院・入所施設を確保すること。
一、審査、指導においては、医学的見地と主治医の裁量を尊重し、監査に伴う処分にあたっては明確な基準をもって行うこと。
一、入院患者が他医療機関を受診することに対しては、減額や制限を設けないこと。
一、窓口でのトラブルや病名告知問題など患者との信頼関係を損なう明細書発行の一律義務化を止めること。
一、強引な後発薬品処方への誘導をやめ、国の責任において品質管理を行う体制を速やかに確立すること。
一、予防接種にあたっては、国の責任において必要な財源を確保し、無過失補償制度を創設すること。
一、医療にかかわる消費税にはゼロ税率を適用し、医療経営に大きな負担となる損税の解消をはかること。
一、 休業保障制度など健全な自主共済については、新保険業法の適用除外とすること。
平成22年5月22日
熊本県保険医協会  第35回定期総会