決 議
 米国発の金融危機による世界経済の混乱は、わが国にも深刻な影響を及ぼしている。
非正規雇用の広がりと大量解雇、格差・貧困の拡大、医療崩壊の進行と、国民生活を巡る状況は悪化の一途を辿っている。いまこそ、外需依存型経済構造と新自由主義路線からの決別が求められている。
 こうした状況下、社会保障の充実による内需拡大が、大不況からの最も有効な施策の一つであることを認識し、積極的に推進すべき時である。
 社会保障分野の充実は、国民の暮らしを支えるセーフティーネットという本来の目的に沿うだけでなく、個人消費を支える有効需要や新たな雇用機会を創出し、経済成長を支える重要な手段である。このことは、政府も平成二十年度厚生労働白書において明確に認めているところである。
 わたしたちは、国民のいのちと健康を守る医師・歯科医師として、社会保障制度の拡充のため、抜本的な政策の転換を求めて、次の項目の実現を要求する。
一、医療の質と安全を保障するため、公的医療費の総枠を拡大し、社会保障費の毎年2,200億円削減策を中止すること。
一、医師・看護師をはじめ医療従事者のマンパワー不足を解消し、医療従事者の労働条件を早急に改善すること。
一、介護職員の待遇改善を行い、「新要介護認定システム」は見直すこと。
一、後期高齢者医療制度は廃止し、保険料滞納者への資格証明書の発行を行なわないこと。
一、療養病床の廃止・削減計画を見直し、地域の実情に応じた入院・入所施設を確保すること。
一、少子化社会に対応して、小学校就学前までの子どもを対象とした、国の医療費助成制度を早期に創設すること。
一、審査、指導においては、医学的見地と主治医の裁量を尊重し、医療費抑制を目的としたレセプト・オンライン請求の義務化を止めること。
一、強引なジェネリック医薬品への誘導をやめ、ジェネリック医薬品については、国の責任において品質管理を行う体制を速やかに確立すること。
一、「医療安全調査委員会設置法案」の拙速な法制化を止めること。
一、臨床研修制度の見直しにあたっては、関係機関と十分に協議を行うとともに、都道府県別定員の上限設定についても再検討すること。
一、医療にかかわる消費税にはゼロ税率を適用し、医療経営に大きな負担となる損税の解消をはかること。
平成21年5月23日
熊本県保険医協会  第34回定期総会