決 議
  本年4月からの診療報酬改定は、その内容が明らかになるにつれ、医療機関に怒りと閉塞感という深刻な影響をもたらしている。
 厚生労働省の医療課長は、先の講演で「マイナス3.16%は、金額にするとマイナス1兆円。医療機関全体で1兆円減。普通の医療機関なら4%下がるだろう」と淡々と述べている。医療現場では、たび重なる診療報酬の引き下げで、医療の質と安全を確保することは限界に達しつつある。
 一方、高齢者の自己負担割合の引き上げや療養病床での食住費の自己負担化、さらには混合診療の拡大により、国民の健康格差の拡大も懸念される。
 わが国の公的医療保険による患者負担は、先進国の中で最も高くなっており、これ以上の医療費抑制策を進めることに断固反対である。
 わたしたちは、国民のいのちと健康を守る医師、歯科医師として、政府が先進諸国並みの医療費の水準まで公的医療費を引き上げることを要求し、次の項目を決議する。
一、診療報酬体系を、医療の質と安全を保障できるように改善し、初診、再診料の医科・歯科格差を是正すること。
一、地域医療計画、医師の養成など、地域の実情に充分配慮し、行政の責任において医師の地域偏在をなくす手立てを講じること。
一、都道府県に医療費抑制を強制する医療保険制度再編や医療費適正化計画の義務付けをやめること。
一、在宅医療の受け皿が未整備な中での療養病床の廃止、縮減をやめること。
一、障害を持つ患者の社会復帰の道を閉ざす、リハビリテーションの算定日数上限を撤廃すること。
一、国保料滞納者に対して機械的、事務的な資格証明書、短期保険証の発行をやめ、保険料の軽減や減免措置の拡充を図ること。
一、国保、社保ともに保険料の上限を撤廃し、高額所得者も同率で保険料を負担するようにすること
一、混合診療の実質解禁をやめ、安全性、有効性が確認された医療技術、医薬品については、速やかに保険導入を図ること。
一、経済財政諮問会議等の提唱する医療費の総額管理や保険免責制度など、医療の不平等を招く規制緩和をやめること。
一、審査、指導において、医学上の判断と医師、歯科医師の裁量を尊重すること。
一、医薬品、医療材料等の価格設定の透明化、内外価格差の是正をはかること。またジェネリック医薬品については、国の責任において、品質管理を行う体制を速やかに確立すること。
一、不当な逮捕に繋がりかねない、医師法21条の「異常死」の明確な定義付けを行うとともに、国の責任において無過失補償制度を創設すること。
一、医療にかかわる消費税にはゼロ税率を適用し、医療経営に大きな負担となる損税の解消を図ること。
一、保険医休業保障制度のような構成員のために運営する自主的な共済制度を、新保険業法の適用除外とすること。
平成18年5月28日
熊本県保険医協会  第31回定期総会