朝日新聞(10/4)会長投稿

医療費増やせ 削減おかしい


 郵政民営化にめどをつけた小泉首相は、次の目標の1つである医療費抑制のため、診療報酬の2〜5%削減を指示したという報道があった。
 この25年間に物価は20%強も上がっているのに、実は、診療報酬はほとんど据え置きのままだ。日本の国民医療費は対国内総生産比で経済協力開発機構の加盟国中17位と低い水準にある。
 わが国では、低い診療報酬を反映して、病棟ではアメリカの5分の1、ドイツの2分の1以下のスタッフしかいない。それでも懸命の努力で世界保健機関が世界一と評価した医療水準を保ってきた。
 診療報酬を、病院にとってサラリーマンの給与のようなものだと例えた報道があったが、もしも非常によい仕事をしているのに、給与が25年間据え置かれたあげく、引き下げられることになったら人はやる気を無くすのではなかろうか。
 医療には毎年新しい技術が導入され、行う仕事量は増えている。医療費は削減するのではなく、むしろ増やすべきではないか。財源は、無駄な公共事業や、不要な公務員の削減で、十分捻出できると思う。



平成17年10月4日  上塚 高弘