1/6「国民の宝」 1/13「WHOの医療評価」 1/20「世界一の医療費抑制策」 1/27「市場原理化の医療」 2/3「患者負担増える『混合診療』」
2/17「高齢社会危機と消費税」 2/24「社会保障と公共事業」 3/2「薬漬け医療の真実」 3/9「国保があぶない」
3/16「誰のための介護保険」 3/23「医師の名義貸し」 3/30「医療報道」


「新世紀の医師憲章」   上塚高弘(熊本県保険医協会会長)


 再び、元米ハーバード大医学部助教授の李啓充先生の講演から。
 先生はアメリカの医療制度を導入しようとしている日本政府の過ちを指摘された後、今度は、2002(平成14)年に欧米の内科学会が制定した「医師憲章」に無関心な日本の医療界に失望したと言われました。
 この憲章は、社会経済的圧力で医師が本来の責務を果たしえない危機感から生まれ、3つの根本原則と10の責務からなっています。
 根本原則は

@患者の利益追求=医師は患者の利益を守ることを何よりも優先し、市場・社会・管理者からの圧力に屈してはならない。A患者の自立性=医師は患者の自己決定権を尊重し、医療内容について患者が納得の上自分で決定が下せるように、力を貸してあげなければならない。B社会正義=医師は医療における不平等や差別を排除するために、積極的に社会活動しなければならない。

  責務としては

@プロとしての能力を身に付ける責務A患者に対して正直である責務B患者の秘密を守る責務C患者との適切な関係を維持する責務D医療の質を向上させる責務E医療へのアクセスを向上させる責務F医療資源の適正配置についての責務G科学的知識についての責務H利害関係に適切に対処し信頼を維持する責務I専門職に伴う責任を果たす責務

を挙げています。
 この医師憲章は既に全世界の90に及ぶ学会・医師団体から推奨されています。日本医師会は2000年に「医の倫理網領」を定めていますが、この憲章はその内容をさらに具体化したものと言えるでしょう。
 私は、日本のすべての医師がこの憲章を手元において、国民の皆さんの期待に応えるよう研鑚することを願っています。
H16年2月10日
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